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東京高等裁判所 昭和26年(行ナ)16号 判決

原告 吾妻貞勝

被告 特許庁長官

主文

特許庁が、昭和二十五年抗告審判第四〇四号事件について昭和二十六年五月三十一日、同第四〇三号事件について同年六月四日にした各審決を取り消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一請求の趣旨

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めると申し立てた。

第二請求の原因

原告代理人は、請求の原因として、次のように述べた。

一、原告は、昭和二十四年二月十二日その発明にかかる内服用沃度剤の製造法(イ)(ロ)について特許を出願し、(イ)は昭和二十四年特許願第一、二二八号事件とし、(ロ)は同第一、二二九号事件として、審査せられたところ(右両発明は、次項で明らかなように、その大部分を共通にするものであるから、以下両事件についての記載も、特に記載するものの外は、全部共通にこれを記載し、ただ両者が相違する場合のみ、次項を除き、(イ)に関するものを本文中に、(ロ)に関するものを括弧内に記載する。)昭和二十五年六月三十日拒絶査定を受けたので、同年八月十六日これに対し抗告審判を請求し、昭和二十五年抗告審判第四〇四号事件(同年抗告審判第四〇三号事件)として審理されたが、特許庁は、昭和二十六年五月三十一日(同年六月四日)原告の抗告審判の請求は成り立たない旨の審決をなし、その謄本は同年六月九日(同月十九日)原告に送達された。

二、原告の右出願にかゝる発明の明細書中「特許請求の範囲」の項に記載したところは(ただしその後訂正書により訂正されたところによる。)、次のとおりである。

(イ)  昭和二十四年特許願第一、二二八号事件

「肝油等の脂肪分百量を摂氏三十度ないし八十度の範囲内において加熱しつゝ、該脂肪分内に沃度十五量以内を少量ずつ分割投入し攪拌して、完全に脂肪分と化合せしめて、遊離沃度を残存することなからしめたる後、「ビタミンB」を適量混合し、服用量中の沃度含有量を極量の数倍ないし数十倍に達することができるようにしたことを特徴とする内服用沃度剤製造法」

(ロ)  昭和二十四年特許願第一、二二九号事件

「肝油等の脂肪分百量を摂氏三十度ないし八十度の範囲において加熱しつゝ、該脂肪分内に沃度十五量以内を少量ずつ分割投入し攪拌して、完全に脂肪分と化合せしめて、遊離沃度を残存することならしめた後、「ナフタリン」十五量以内を混和し、服用量中の沃度含有量を極量の数倍ないし数十倍に達することができるようにしたことを特徴とする内服用沃度剤製造法」

三、これに対し審決の要旨は、次のとおりである。

(一)、沃素は肝油のように不飽和油に対して徐々に添加し、沃素油脂結合物が生成せられること、その際沃素が添加せられる速度は、作用する場合の温度等により異るものであること、かくして生成せられた沃素油脂結合物が医薬として価値のあるものであることは、それぞれ極めて公知事項に属し、何等の疑いの余地がないところである。

(二)、かつ沃素添加にあたり、沃素十五量以内といえば、脂肪分百量に結合させる沃素としては、何等特異な分量でないばかりでなく、その処理温度を摂氏三十度ないし八十度の範囲内とするようなことも、当業者が適宜に採用し得る程度のものであるから、何等本件発明の沃素油脂結合物の製造には新規な点が認められない。

(三)、従つて本件発明の要旨は、沃素油脂結合物に、「ビタミンB」(「ナフタリン」)を混和して、内服用沃度剤となす点に存するものと認める。

(四)、しかしこれは、原査定でも説示せられたとおり、医薬の調合法に該当し、特許法第三条第二号の規定により特許することができない。

としており、こゝにいう原査定の理由は、「本願の発明は医薬の調合法と認められるから、特許法第三条第二号の規定によつて、これを特許し待ないものと認める。」との拒絶理由通知書の理由の記載を引用し、なお備考として、「出願人は意見書を提出して、本願方法は医薬の調合法ではないと主張するが、本件方法の要旨は肝油等の如き脂肪分を含有する物質と沃度とを結合させたものと、ビタミンB(ナフタリン)とを配合する点にあると認められるから、出願人の意見は、これを採用しない。」と付け加えている。

四、しかしながら審決は、次の理由により違法であつて、取り消されるべきものである。

(一)、本件発明は、前述の明細書中「特許請求の範囲」記載のとおりであつて、すなわち(a)肝油等の脂肪分百量を摂氏三十度ないし八十度の範囲内において加熱しつゝ、(b)このなかにこれを攪拌しつゝ沃度十五量以内を少量ずつ分割投入し、完全に脂肪分と化合せしめ、(c)その冷却を待つて、「ビタミンB」適量(「ナフタリン」十五量以内)を混和するものであつて、この三工程の有機的結合から成り、

R1-CH=CH2-COOCH2

R3-CH=CH4-COOCH+3I2

R5-CH=CH6-COOCH2

R1-CHI-R2-COOCH2

―→R3-CHI-R4-COOCH

R5-CHI-R6-COOCH2

等の化学反応の行われることを、その要旨中に包含するものである。

本件発明のような製造方法による内服用沃度剤は、本件出願前に一般製薬業界及び病院等において使用されたことはなく、また知られてもいなかつた。勿論沃度剤というものが古くからあつたことは明白な事実であるが、従来存在しかつ知られた沃度剤の製造方法は、本件発明のような内服用沃度剤製造方法と異なるのは勿論、これと類似する方法ですらもなく、沃素化脂肪剤に相当する薬品である造影剤としてのヨヂピンJodipin、モリオドール、リビオドール、ラフエー等の如きは、本件発明のような製造法によつて製造したものでない。すなわち沃素を単体の侭脂肪に反応させたものではなく、沃素と水素との化合物である沃素化水素と脂肪とを反応させて製造し、その結果有毒な沃素化水素が多少製品中に残溜し、造影剤のような一時的の使用ならばともかく、連続服用する内服用としては使用し得ないものである。

このように原告の発明にかゝる沃度剤製造方法は、公知公用のものでもなければ、或は従来公知公用のものから容易に実施することのできるものでもない。

そして審決は、本件発明の要旨は、単に沃素油脂結合物にビタミンB(ナフタリン)を混和して内服用沃度剤となす点に存するものと認めているが、元来医薬の調合法とは、数種の医薬が単純に混合し、その成分たる各医薬がその個性を失わないで、それぞれ各別にその特性を発揮するものであるのに、本件出願の発明では、前記のように、単体では元来劇薬で服用不可能の沃度を、脂肪分中に化合させることによつて、極量の数倍ないし数十倍の服用を可能としたものであるから、沃度と脂肪分とは単純に混合したものではないのはもちろん、その各成分がそれぞれ各別にその効力を発揮するものでもない。

従つて医薬の調合法でないことは明白であるのに、これについて特許法第三条第二号の規定を適用したのは、法律の適用を誤つたものである。

本件発明の方法によつて製造した沃度剤は、「ダンテロン」(「ルナチン」)の名称で、東京大学附属病院等で長期間臨床実験を行い、すでに沃度極量の数十倍もの服用が可能であり、その治療効果の優秀であることが証明されている。もし審決のいうように、医薬の調合法であるならば本発明の各成分である脂肪分、沃度、ビタミンB(ナフタリン)等はその個性を失わないで、それぞれ各別の特性を発揮する筈であり、沃度の極量の数十倍もの服用は不可能のことである。この一事だけでも審決の誤つていることは明白である。

(二)、審決の理由における前段すなわち(一)、(二)の沃素油脂結合物の製造に関する点は、拒絶査定に示したとは別個の理由であるから、特許法第百十三条第一項の規定に従つて、原告にこれを通知し、意見書提出の機会を与えるべきであるのに、これをしなかつたので同法の違反であり違法である。

また右(一)、(二)の理由には、その根拠となるべき何等具体的事例の記載がなく、ただ漫然と本件出願を拒絶したのは、審理を尽さないものである。審決は本件発明が、服用量中の沃度含有量を極量の数倍ないし数十倍に達することができるようにしたことに対しては、何等顧慮するところなしに、ただ漫然と「本件発明の沃度油脂結合物の製造法には何等新規な点が認められない。」としたのは、本件発明がどのような方法でもつて、極量の数倍ないし数十倍の服用を可能にし、以つて動脈硬化症、血圧亢進症、脳溢血、機能障害諸疾患等(以つて消化器系諸疾患等)に著大な治療効果を及ぼしたものであるかについて、十分に審理を尽さなかつたものといわなければならない。

(三)、元来沃度剤が諸々の治療に有効なことは知られていたが、沃度は元来劇薬であつて、その極量は一回〇〇、〇二瓦、一日〇、〇六瓦とせられ、この程度の服用量では治療効果が弱くて到底充分な治療効果を発揮できなかつたのである。もし「肝油等の脂肪分百量を摂氏三十度ないし八十度の範囲内において加熱しつゝ沃度十五量以内を少量ずつ分割投入して完全に脂肪分と化合せしめて遊離沃度の残存することのないようにすること」が当業者の適宜採用し得る程度のものであるならば、この方法によつて沃度分を極量の数十倍以上の服用を可能とし、治療効果を甚大にするものが本件出願前に、現に実施されていて然るべきものであるのにかゝわらず、現に実施されていないのであるから、本件発明を当業者が適宜採用し得るものとはなし得ない(甲第一号証参照)。

第三被告の答弁

被告指定代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、原告主張の請求原因に対して次のように述べた。

一、原告主張一、二、三の各事実はこれを認める。

二、同四の主張を否認する。

(一)、沃度を油脂分中に結合させたものは、医薬としてすでに本件出願前より公知に属しているから、このものをビタミンB(ナフタリン)と混用し、服用量中の沃度含有量を極量の数倍ないし数十倍に達することができるようにした点は明らかに特許法第三条第二号の医薬の調合法であり、原告の主張(一)は理由がない。

(二)、審査官がした拒絶査定は、本願発明は沃度油脂結合物とビタミンB(ナフタリン)とを混用する点を要旨とするものであるから、特許法第三条第二号の医薬の調合法に該当するという理由によるものであるところ、審決においても本件出願発明の要旨は、同じく医薬の調合法にかゝるものであるという認定によつており、何等別個の理由によるものではない。ただ審決においては、本件出願の発明の要旨が特許法第三条第二号の医薬の調合法にかゝるものであると認定した理由を説明する目的で、その沃度油脂結合物の製造法に言及して、その製造法は当業者が容易に、かつ適宜実施し得られるいわゆる発明に値しない方法であることを明らかにしたに止まる。従つて審決には特許法第百十三条第一項の規定に違背した不法はない。また審決において認定の根拠が顕著な公知事実に立脚している場合には、その公知事実を具体例を示して立証する必要がないから、この点も違法ではない。(公知事実については、乙第一、二号証参照。)

(三)、肝油等の脂肪分百量を摂氏三十度ないし八十度の範囲内において加熱しつゝ該脂肪分内に沃度十五量以内を少量ずつ、分割投入して完全に脂肪分と化合させて作つた沃度油脂結合物のみが、服用量中の沃度含有量を極量の数倍ないし数十倍に達せしめ得べき効果を有するものとは思われないので、他の方法によつて作られた同様の沃度油脂結合物においても、当然このような作用効果がもたらされるものと思われる。

すなわち沃度油脂結合物は医薬として、本件出願前から既に公知公用に属しており、更に本件出願発明の沃度油脂結合物の製造方法も、当業者が容易に実施し得られる程度のものであつて、発明に値しない方法であるから、本件出願発明の要旨を、沃度油脂結合物とビタミンB(ナフタリン)とを混用して内服用沃度剤となす点にありとして、これを特許法第三条第二号の医薬の調合法に該当すると認定した審決には、原告のいうような違法はない。

第四証拠(省略)

理由

一、原告主張の請求原因一、二、三の各事実は、当事者間に争がない。

二、次いで原告の本件出願の発明の要旨について判断するに、その成立に争のない甲第二、三号証の各一、二によれば、本件特許願添付の明細書中「発明の性質及び目的の要領」の項(訂正書により訂正されたところによる。)には、「本発明は肝油等の脂肪分百量を摂氏三十度ないし八十度の範囲内において攪拌器内にて加熱しつつ、該脂肪分内に純沃度十五量以内を少量ずつ分割投入攪拌して完全に脂肪分と化合し、沃化脂肪酸グリセリンエステルを生成せしめて、前記攪拌器内に遊離沃度を残存することなからしめたる後、その冷却を待つてて、ビタミンB剤を適量混合し(純ナフタリン十五量以内を混和し)、これをカプセル内に充填して丸薬となし、服用量中の沃度含有量を極量の数倍ないし数十倍に達せしめるようにしたことを特徴とする内服用沃度剤製造法にかゝりその目的とするところは、何等の副作用を伴うことなくて、沃度の極量の数倍ないし数十倍以上の服用を可能となし、沃度剤独特の変質作用を十分に、かつ適確迅速に発揮して、ビタミンBの作用(ナフタリンの収斂作用)と相俟つて、動脈硬化症、血圧亢進症、脳溢血、腺病性体質、機能障害諸疾患等(消化器諸疾患)の治療に最適な内服用沃度剤を容易かつ安価に得んとするにあり。」と記載し、「発明の詳細なる説明」の項には、「元来沃度剤は、動脈硬化症(中略)等(消化器諸疾患等)の治療上(中略)甚だ有効なことは従来知られていたが、沃度は元来劇薬に属し、その極量は一回〇、〇二瓦一日〇、〇六瓦とせられ、この程度の服用量にては、その治療作用微弱にして致底十分な治療効果を発揮すること困難な実情にあつたが、本発明は(中略)服用量中の沃度含有量を極量の数倍ないし数十倍に達せしめることができるようにし、これにより前記の困難を克服して著大な治療効果を持つ内服用沃度剤を得ることを可能とせり。」として実施例及び請求原因四の(一)に記載したような化学方程式を示した後、「本発明にかゝる内服用沃度剤は一日服用量中の沃度含有量は、〇、二四ないし一、二瓦以上(〇・一五瓦ないし一・〇瓦以上に達し、極量の数倍ないし数十倍以上なるにもかわらず、沃度分はすべて沃化脂肪酸グリセリンエステルの状態で存するから、人体に何等の副作用をも与えることなく、しかも腸壁における吸収率良好につて患部組織の新陳代謝を著しく旺盛とし、いわゆる変質作用を十分に、かつ適確迅速に発揮し、ビタミンBの作用(ナフタリンの収斂作用と肝油中のビタミンADの作用)と相俟ち、動脈硬化症(中略)等(消化器諸疾患等)に著大な治療効果を及ぼすものとす(以下省略)。」と記載されている。

これらの記載を明細書における「特許請求の範囲」の項に記載された「前文所記の目的において、前文に詳記せる如く、肝油等の脂肪分百量を摂氏三十度ないし八十度の範囲内において加熱しつゝ、該脂肪分内に沃度十五量以内を少量ずつ分割投入して攪拌して完全に脂肪分と化合せしめて、遊離沃度を残存することなからしめたる後、ビタミンBを適量混合し、(ナフタリン十五量以内を混和し)服用量中の沃度含有量を極量の数倍ないし数十倍に達せしめることができるようにしたことを特徴とする内服用沃度剤製造法」の記載と総合して考察すれば、本件発明の要旨は、(a)肝油等の脂肪分百量を、摂氏三十度ないし八十度の範囲内において加熱しつゝ、(b)該脂肪分に沃度十五量以内を少量ずつ分割投入し、完全に脂肪分と化合せしめ、遊離沃度を残存することなからしめた後、(c)ビタミンBの適量(ナフタリン十五量以内)を混和する方法にあるものと認定するを相当とする。

すなわち原告が本件において発明として特許を出願した方法は、右(a)(b)(c)の三過程からなるものであつて、しかも(c)のビタミンB(ナフタリン)の混和は、明細書各項に、極めて簡単に記載されているのに反し(甲第二、三号証の一、二によれば、その実施例においても、ビタミンB(ナフタリン)の混和については、「これ(沃度油脂結合物)を放置し、冷却するを待ちて純ビタミンB1粉末〇、〇一瓦を混合し、(日本薬局方ナフタリン粉末九瓦を略々均等に混和し、)」と記載されているに過ぎない。)、(a)及び(b)の沃度と肝油等脂肪分の化合については、明細書の各項において、その方法を詳細に記載し(前示実施例においては、この関係を化学方程式を以て説明し、かつその作用、効果を述べている。)、かつ従来知られたところと対比しつゝ、その新規なことを強調している点に徴すれば、原告の発明は、(c)の沃度油脂結合物とビタミンB(ナフタリン)を混和することより、むしろ(a)及び(b)の沃度と脂肪物との化合体である沃度油脂結合物を製造する方法に、より重点を置いていることを知ることができる。

しかるに審決は、(a)(b)の沃度油脂結合物の製造方法は何等新規な点が認められないとの理由に基いて、本件発明の要旨は、「沃素油脂結合物にビタミンB(ナフタリン)を混和して内服用沃度剤とする点にあり。」と前記(c)の点のみを本件発明の要旨と認定したものであるが、出願にかゝる発明の構成の一部が、新規でないことは(正確にいえば、審判官が新規でないと判断することは)、これが出願の発明の要旨の一部をなすことを何等妨げるものでないから、審決が前記(a)(b)を要件に非ずとして、(c)のみを本件出願発明の要旨としたことは、本件出願発明の要旨の認定を誤つたものといわなければならない。

三、審決が(a)(b)の点については、あらかじめ拒絶の理由を原告に通知して、その意見を聞くこともなく、((a)(b)の事実が、審決のいうように、「極めて顕著な事項に属し、何等の疑いの余地のないところであり。」または「当業者が適宜に採用し得る程度のものである。」にしても、そのことは、具体例の引用は別として、拒絶の理由をあらかじめ出願人に通知して、意見を述べしめる機会を与えなければならないとする、特許法第七十三条、第百十三条の規定の適用を排するものではなく、いわんや、原告が本訴において主張するところの大部分が、まさにこの点に関することに鑑みれば、これを何等具体的の引例をも示すことなく、「極めて顕著な事項に属し、何等疑いの余地のないところ」とすることの当否も問題であろう。)(c)の点のみについて、本件発明は医薬の調合法に該当するとして拒絶すべきものとしたのは、畢竟右要旨の認定を誤つたことに基因するもので、従つてこの点からも審決は違法たるを免れない。

四、なおある出願にかゝる発明の要旨が、その明細書における請求の範囲等の記載のいかんにかゝわらず、その実質において、これを医薬の調合法に存するものと解するを妥当とする場合もあるであろう、仮りに本件発明がこの場合に該当するものとしても、審判官は、あらかじめ出願人に対し、その然るべき理由を通知し、意見を述べる機会を得せしめなければならないことは、前述するところと同様であるから、何等かゝる措置に出でなかつた審決は、この点からいつても違法たるを免れないものといわなければならない。

五、以上の理由により審決は違法であるから、その余の点については判断をするまでもなく、これが取消を求める原告の本訴請求はその理由があるものと認めて、これを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決した。

(裁判官 内田護文 原増司 入山実)

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